商品説明
ある夜とつぜん電話をかけてきた、同級生と称する男。嘘つきで誠意のかけらもない男だと知りながら、私はその嘘に魅了され、彼に認められることだけを夢見る――。「私のすべては二十三歳で決まる」。なぜかそう信じる主人公が、やがて二十四歳を迎えるまでの、五年間の物語。本谷有希子ワールドを鮮やかに更新する飛躍作!
著者紹介
本谷有希子 (著)
- 略歴
- 1979年石川県生まれ。「劇団、本谷有希子」を旗揚げし、主宰として作・演出を手がける。小説家。「幸せ最高ありがとうマジで!」で岸田國士戯曲賞を受賞。著書に「グ、ア、ム」など。
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
小分け商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この商品の他ラインナップ
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
紙の本
ぬるさよりきつさの方が効く
2011/09/06 08:12
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「小説はストーリーとキャラクターから成る。わかりきった話だ」。第145回芥川賞の選評にそう書いたのは、今回の選考を最後に選考委員を降りる池澤夏樹氏である。
今回の芥川賞は受賞作なしという残念な結果であったが、それぞれの選考委員の選評を読むとそれもまたやむなしかと思う。では、実際にそうだったのか。
若手演劇人ですでに才能の萌芽のある本谷由希子の候補作『ぬるい毒』を読んでみた。
ある日高校時代に借りたお金を返したいと電話をかけてきた男。しかし、「私」には記憶がない。それがきっかけになって、「私」と男向伊の奇妙な交際を描いたのが本作である。
冒頭の池澤夏樹氏の言葉ではないが、ストーリーはなんとかわからないでもないが、キャラクターが全く理解できないのを小説といえるのだろうか。
主人公の「私」にしても向伊にしても、はたまた向伊の友人たちもその顔かたち造形が見えてこないのだ。
のっぺらぼう。
演劇人の本谷にとって、作中のキャラクターは演じる俳優のものかしらと考えてしまうくらいである。俳優Aが演じたらAの個性が、俳優Bが演じたら主人公はBの個性になるといった具合に。でも、それってどうなんだろう。
この作品の山田詠美選考委員の選評がふるっている。「この小説に生息するのは、ただのいっちゃってるお姉ちゃん。つき合いきれない」。
ここまで言われたら作者としてはショックだろう。
いい評価をつけたのが、宮本輝選考委員。「顕在化しない狂気を感じて、私はいちばん高い点をつけた」とあるが、この作品は変に狂気が顕在化しているから「つき合いきれない」のではないかと思う。
そして、おそらく川上弘美選考委員の評、「向伊の、どこがそんなに魅力的なのだろう。それさえわかれば、もっとこの小説の中の中まで入りこめたかもしれません」というのが一番的を得ている。
本谷にとって今回の選考委員の各評はけっして「ぬるい毒」ではなかったはずである。
きつい毒をどう薬に変えていくか、本谷有希子の闘いは始まったばかりだ。
紙の本
本谷有希子ワールド全開
2016/03/29 00:53
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:daisuke - この投稿者のレビュー一覧を見る
作品の多くが舞台化・映画化されている本谷有希子。その作品の特徴は何と言っても、「狂気を孕んだ女性」だ。本作も主人公の女性が持つ不思議な魅力を中心に物語が展開していく。狂気の中に人間の本質を描く本谷有希子ワールドの真骨頂。